最終更新日2018.01.20
事例2六本木の飲食店ビル(六本木大和ビル)の開発裏話
- 竣 工
- 2017年
- 最 寄 駅
- 日比谷線・大江戸線六本木駅徒歩2分
- 敷地面積
- 133.89㎡(76.84%/686.28%)
- 建築面積
- 102.87㎡
- 延床面積
- 997.79㎡(地上11階建/1~11階床面積:87.61~90.83㎡)
- 構 造
- 鉄骨造
- 用 途
- 小売店 + 飲食店
当該地は、1976年に開業したヨーロピアン調のホテル。当時としては珍しいスイートルームを有し、内外装にこだわった建物は人気と注目を集めていました。ただ、人気があっても終わりがくるのが常です。
1976年 ホテル開業
2014年 閉館〜解体工事
2017年 跡地に別の事業者がホテルをオープン
3行でまとまる歴史のなかで、不動産プロデューサーの小森恒茂が怒涛の活躍をしたのです。その期間はわずかに1年。当該地の41年間の歴史のなかの小森の1年間を振り返ってみます。
当初は、大手ハウスメーカーが再開発に着手。
旧ホテルは共同債権で運営されていたため、建物の解体をはじめ多種の利権が複雑に絡んでいます。これを調停するという難題をうまく取り扱いきれないまま、当初は大手ハウスメーカーが関わっていました。そのプランは、このような内容です。
大手ハウスメーカーでは、
共同債権者の利権調停をまとめられなかった。
とてもシンプルなプランのように思えますが、結果として大手ハウスメーカーはこのプランを実現できなかったのです。ホテルの土地と建物が共同所有されていたため、解体費用の持ち分比率の調整ができなかったばかりか、あたらしく竣工する予定のオフィスビルのプランニング自体が拒絶されます。そして、悲劇が起こりました。共同債権者に対して、大手ハウスメーカーが辞退を申し入れてきたのです。しかも何ら実績をだしていないにも関わらず、コンサルティング費用の請求までおこなっています。
成果をあげずに請求するような行為を
許してはならない。
小森のもとに話が舞い込んできたのは、ちょうどこの辞退劇の最中です。「非常にけしからん話だ」と考えて最初におこなったことは、大手ハウスメーカーが受け取ってしまったコンサルティング費用の全額の返金を命じ、共同債権者のもとに差し戻したことです。成果をあげずに報酬をとる行為を許してはいけません。不動産プロデュースの世界では、成果報酬制が原則なのですから。
償却プランをきちんと描きだし、
テナントビジネスを提示すことが基本原則。
当該地は六本木交差点に近い歓楽街。こんな場所にオフィスビルを建てても、きちんと収益があげられないことは明らかでした。小森が毎回思うことは、不動産ビジネスをきちんと提供できない大手ハウスメーカーがあまりに多いことです。このロケーション特性から導き出される最善の答えは、「飲食店」しかありません。リサーチを委託した結果、その直感が正しいことが分かり、不動産ビジネスのモデルを描き出しました。
これがもしオフィスビルだったとしたら、坪単価は半減してしまうだけでなく空室率があがって採算がでません。儲かる不動産ビジネスを描き出すことで、はじめてお客さま(施主)の信頼を得るのです。
信頼を得ても、
油断せず利権関係の調停をおこなう。
解体費用の拠出比重をどうするかで共同債権者同士が当初からもめていました。こんなことに時間を割くべきではないのです。すでに解体工事は始まっており、受け渡す跡地には別事業者のホテルの建設がはじまります。どのような飲食店の複合ビルを建てるのかを、速やかに決定する必要がありました。すぐに解決して次の工程へと急がなければならないのです。この事例では共同債権者同士の拠出の問題は、幸運にも即決しました。小森は、この手の揉めごとをうまく丸めることに手慣れています。しかも、もうひとつの利権との闘いのドラマがあったのです。それは、隣接地の寺院との景観保護と寺院への参道確保を求めて発生した利権争いです。この問題に関しては、写真のとおりのフェンスで参道を保護することで解決させています。
建築に不測の事態は付きもの、
無暗に価格高騰を施主に突きつけてはならない。
建築には不測の事態がつねに発生します。この事例では、東京オリンピックの開催決定によって建設価格が高騰したのです。価格が変われば当初の10年償却プランの変更を余儀なくされます。事情を説明して施主に値上げへの理解を求めることもできますが、なるべくそれは避けなければなりません。建設費用を再考するのも方策のひとつですが、それだけでは不十分でした。
東京オリンピックの価格高騰を言い訳にはしない、
こういう時にこそウルトラCを発動する。
価格高騰への秘策がこれです。
同時期におこなう工事であるならば、同じ建設会社に任せたほうが建設コストは下がるのです。コネクションを辿って建設会社Bにたどり着き、秘策を実現させました。こうして建設コストを10%以上削減しています。
不夜城の六本木のなかで、六本木大和ビルの入居率はまもなく100%を達成します(2017年12月現在)。
1976年 ホテル開業
2014年 閉館〜解体工事
2017年 跡地に別の事業者がホテルをオープン
3行で語られる歴史の背後で、小森は人知れず動いていたのです。
【まとめ】
力量不足の相手に不動産運営を任せると悲劇になる(ところだった)。