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チーム the コモリ

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一つの現場に常駐する。
現場監督/吉田一孝

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吉田さんは愛嬌のある笑顔がトレードマークだ。現場監督歴、25年。仕事先からの信頼は篤い。20代半ばから自分の指名で仕事を請け負ってきた。住宅建築の仕事は、ハウスメーカーと勝負すれば価格競争になる。それでは絶対に勝てない。そこで吉田さんは若いころから独自の戦略を練ってきた。

現場を掛け持ちしない仕事スタイル。

「ハウスメーカーにはできない家」で勝負しようと思ったんです。つまり、「建築家」の図面を形にできる施工を目指す。そして、一つ一つの現場をきちんと仕上げる。そのために、現場を掛け持ちせずに「一度に一軒しか受けない」スタイルになりました。現場監督は自分で道具を持って作業をするわけではありません。あくまでも指示をする仕事です。そして、部材の手配や、職人さんの工程を指示するために、設計屋さんが描いた図面に対して、より細かな図面を描きます。たとえば、ドア一枚にしてもドア枠を何ミリにするかとか、どんな金物を用意するかとか、テーブルなら角をどのくらいのR(曲線)にするのかなど、品物を発注するための図面を作る必要があるのです。

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現場監督にとって一番忙しいのは、じつは工事が始まる前の段階です。こなすべきことがとにかく多いのです。建物の基礎の図面を描き、柱のチェックと発注を行い、次は窓サッシや屋根の部材の手配など工程に沿って先々の段取りを次々に行います。工期の後半になれば比較的落ち着いてきますが、次にとりかかる現場の準備を並行して作業することになります。今は、何軒も同時に現場を掛け持つ現場監督が普通ですから、一度に一軒しか受け持たないスタイルは珍しいと思います。どうして設計屋さんが僕に依頼をしてくれるかと考えると、僕が常に現場にいるからだと思うんです。常に一つの現場に朝から常駐する、現場監督が毎日来ている、という安心感が大きいのではないでしょうか。このスタンスでずっと長年続けてきたからこその信頼もあると思っています。現場監督がいない現場は、どうしても大工の気も緩むんですね。一日で何軒も現場を回ることは、自分もやればできます。ハウスメーカーのようにすべて規格が決まっている家ならば、何軒でも受け持てるのかもしれないですけど、設計屋さんとの仕事はそうじゃないと僕は思っています。会社からは「甘い」って言われますけどね(笑)。一度、施主さんから床下を綺麗に掃除してほしいと言われていたのに、引き渡す直前になって施主さんに「綺麗にしていない」と言われたことがあるんです。そのときはずっと現場にいられなかったので、床を貼っていくときに出るゴミまでは掃除できなかったんですね。常に現場にいて大工さんに細かく指示を出していなければ、とても無理だと痛感しました。それが転機になりました。

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一つの現場にかかりきりになると、もちろん売上は伸びないことは分かっています。会社として売上は大事ですが、ハウスメーカーとの競合をやめると決めた以上、自分のスタンスを崩してまでやろうとは思わないですね。お客さんに迷惑かけるわけにはいきませんし。

いい仕事をするには、お金が高いのは仕方ない。

僕は小学校4年生くらいから大工になりたいと思っていました。高校を出てすぐに工務店に入社しました。そして「大工になった!」と思って、最初の現場に行ったんですね。そこでは見習いということで、大工さんのお手伝いをしていました。片付けや掃除をしたり、材木を運んだりといったことですね。大工修行の下準備をしているつもりでした。ところが、次の現場で同じように仕事をしようとすると、職人さんから「監督さん」と呼ばれたんですね。自分は大工だと思っていますから、誰のことを呼んでいるのか全然分からないわけです(笑)。自分が「現場監督」という立場なのだと、そこで初めて知ったんです。当時は20歳そこそこで、まわりは全員年上です。職人はみんな年上でありながらも、僕の会社の下請けでもあります。だから意外に年齢は気にしなかったですね。そうこうするうちに、次第に周りから天職だと言われるようになりました。自分でも向いているのかもしれないと思うようになりました。建築の勉強をしっかりしたほうがいいと思い、22歳のときに働きながら夜学に通って建築を学びました。卒業するころには、すべて一人で現場を回せるようになっていましたね。

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もちろん経験が未熟なころは、職人さんに騙されたこともありました。「ここはこんな感じでやっておきます」と言われて「いいですよ」と言ったら、こちらが見ても分からないのをいいことに違う施工をされるんですね。当時はそういう職人、多かったんです。 全部やり直しをしたこともあります。そのころはまだ施主も会社も余裕があったから、やり直せたんですね。でも、だんだん時代を追うごとに、そこは厳しくなっていますね。やり直しが利かなくなっちゃってます。だからこそ信頼できる職人さんは今、とても大事なんです。言うことを聞いてくれるだけじゃなく、相談できて意見を言ってくれる人しか使いたくないですよね。いい職人さんを呼べることも、現場監督の大事な能力です。それで25年間、職人さんを常に見極めながら、けっこう選んで替えてきたとも思います。

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職人さんを見るとき、一番初めに確認するのは口のきき方ですね。偉ぶっているつもりではまったくないのですが、年下の自分に対しても敬語で話して礼儀をわきまえながら、きちんと意見を言ってくる人は、間違いなくいい職人です。いい仕事をするには、お金が高いのは仕方ないと思ってるんです。決められた全体予算があるのでその中でお金を割り振るわけですが、多少お金をかけてでもいい職人さんを選ぶことをよしとしようと考えています。丁寧にやってくれる人は時間もかかりますから、お金もかかるんです。だけど、後でやり直したり揉めたりするくらいなら、最初からいい仕事をしてくれる人のほうがいいわけです。大工さんの場合は、自分で道具を全部買いそろえるので、壊れたら買い替えますし、その分は多く支払う必要がありますよね。

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施主からのクレームがくることは、ほとんどない。

現場では建物を引き渡す前に、設計屋さんにはすべて必ずチェックしてもらいます。それ以前にも、もちろん要所要所で設計屋さんのチェックを受けています。他にも構造屋さんを呼んで釘のピッチや金物がちゃんと付いてるかとか、全部検査をしてもらいます。構造の検査だけで2回はやりますね。他にも瑕疵担保保険の検査もあります。

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自分でやったところを自分で見ていても気づけないことがあるんですよね。そうやって細かくチェックを入れることで、職人さんが気を抜けなくなるということもあります。ここまで二重三重のチェックをしていますので、施主さんからクレームが来ることは、「雨漏り」や「漏水」を除けば、まずないです。雨漏りや漏水だけは、どんなに丁寧にやっていても起きてしまうことがあるんですね。もちろん手抜き工事ということではなく、真面目に手を動かしている職人自身でも気づけないことがあります。たとえば最近あったのが、洗面所の床がだんだん黴びてきたと言われて、調べにいきました。床を剥がしてみると下に水が溜まっているんですね。結局、壁の中の給水管に外から打った釘がコツッと当たっていたことが原因でした。それもちょびっとだけなんです。逆にもし大幅に水が漏れていればメーターですぐに分かるのですが、本当にちょっとだと1年たってようやく異変に気づくことになるんですね。これは、現場の職人も気づけませんでした。もちろん無償で直します。そのために瑕疵担保保険もありますので。とにかくそのようにして、一つ一つの現場を丁寧にきちんと仕上げることが自分の仕事の仕方だと今は強い確信を持っています。

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これからは一緒に仕事してくれるパートナーも必要になるだろうけれど、吉田さんは楽しそうだ。「パートナーとは意見を言い合ってどっちがいいか協議できるといいですよね。自分も教えられるいい機会かもしれないです」2017年、吉田さんは25年勤めた会社を独立し株式会社ワン・クラフトを設立。

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