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チーム the コモリ

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建築は、現場で決まる。
建築士/安村建夫

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安村さんは一見コワモテの風貌だ。しかし、話しはじめるととても穏やかな口調で、時おり柔和な笑顔を見せてくれる。建築について語り出すと、次第に言葉に熱が籠もる。木造建築の建築士として半世紀を現場で生きてきた大ベテランに、家づくりと設計について話をうかがった。

家は、一番むずかしい。

私はオフィスビルからマンション、戸建て住宅といろいろ設計をしてきましたけど、家は一番むずかしいですよ。生活のすべてが詰まっていますから、一番頭を使うんですね。必死に頭を使わないと「いい家」は絶対にできません。
家の場合、お客さんもいろいろです。人数も年齢も趣味もそれぞれ。建築の知識レベルもそれぞれですよね。建築士はお客さんに合わせなきゃいけないし、かと言って合わせすぎてお客さんに迎合しすぎても使い勝手のいいものにはならない。同じ型の使い回しというわけにもいかないものですよね。
建築士のほうだっていろいろなんです。

図面を描くことに重点を置くタイプもいれば、現場監理に力を入れるタイプもいます。「コミュニケーション能力」は必須だと思いますが、口ばかりうまくて設計がへたな人だっています。ふだん100坪の家を設計している人と30坪を設計している人だってスキルは違ってきます。
ある有名な建築士は、お客さんの目の前で自分から逆側にスケッチを描いてお客さんに見せられます。ものすごい特殊技術ですよね。全部、相手目線で線を描ける。そしてその画がものすごく巧い。私も真似してやってみようかと思いましたけど、無理でした(笑)。建築士が力を入れるポイントもそれぞれなんです。

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設計図で、家は決まらない。

私は、建築現場が好きな建築士です。
そもそも「設計図面」に数字を書き込んでも、現場でその通りに仕上がるわけではないのです。むしろ、細部の寸法は現場で最終的に決めるんですね。だから「現場監理」は面白いです。
自分で現場で判断し、言った通りのピッタリの寸法ができる。自分の感覚で建築を完成させられるのです。その場にピッタリ合ったものがちゃんと仕上がるというのはものすごく達成感がありますよ。
本当に自分がいいと思ったものを造るには、現場でミリ単位で詰めるしかないんです。たとえば、ドアの高さにしても、障子の桟にしても、現場に行ってみてこのくらいがいいということがあるんです。設計図に描かれたものをそのまま作るだけでは、最終的な使い勝手はよくならないです。

自分の身体の寸法を叩き込む。

私が企業で若い建築士の教育係を担当していたとき、まず自分の腕や手や指の長さを測って覚えておくことを教えていました。大人になったらもう手足の長さは変わりませんから。たとえば「50mm」がどのくらいかということを身体で覚えるんです。
そうすると、普段の生活でも寸法は常に気になります。テーブルの高さ、ソファの高さ、天井の高さ、壁までの距離。いつも自分の身体を使えば寸法が分かります。そうして身体で覚えた感覚が現場で一番役に立つんです。

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私自身も現場から多くのことを学んできました。
職人がやっていることを見て、自分でもある程度はできないと指示も出せないんです。たとえば、漆喰を塗る左官にしても、平らに塗る方法を自分も知っていないと、左官屋さんに馬鹿にされちゃうでしょ。
新人教育のときには、会社で釘を打たせていました。これがまっすぐ打てない人がいるんです。そういう人に現場監理を教えるのは本当に難しいですよね。
私も現場監理は最初、怖かったですよ。
初めての現場で、家屋の二階からノコ(のこぎり)が落っこちてきたんです。大工が脅かしてるんですね。こっちは新人だし、ビクビクするじゃないですか。あとで「あいつはいつもそうやって脅すんだ」って聞きましたけど。あれは恐怖でした(笑)。 でもそれも「教育」だったのかもしれないですね。そのおかげで現場での安全には気をつけるようになりましたし、大工との付き合い方も覚えられたのだと思います。

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現場監督が「段取り屋」になってしまう弊害。

現場監督っていう工務店のポジションの人がいるんですけど、今はあまりに忙しくて段取りに追われちゃうんですね。
「いつこの現場に大工が入る」「いつ建具が届く」とか、そういうことで精一杯。しかも、最低でも4~5件の現場を抱えて回ってますから。忙しすぎるんですね。「筋交いがちゃんと付いているかとか」「釘がちゃんと打っているか」といった工事の品質をチェックする余裕がないんです。
私は、年間40棟くらいを手がける会社と、500棟の会社と、2000棟の会社と仕事でお付き合いをしてますけど、年間40棟くらい手がける会社のほうが一番しっかりした仕事をしていますね。年間の取り扱いが多いほど現場監督の監理が行き届いていないです。
一方で、ハウスメーカーの監理はすばらしいです。品質確認は別の人が受け持つので分業されているんです。大工の安全管理もものすごく徹底している。ハウスメーカーでいいところはそのくらいでしょうけど(笑)

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綺麗な現場では、事故が起きない。

現場って、一目見るだけで、その職人のレベルが分かるんです。
しっかりしている現場は、本当に整理整頓されていて綺麗なんですよ。作業中でも、道具は決まった場所に常に置くんですね。だから、散らかっているということがない。
そういうことがきちんとできる人が「器用」なんだと思うんです。たとえば、子どもころに鉛筆をナイフで削るにしても、シャシャシャシャってやっちゃう人と、丁寧にゆっくりやる人っていたでしょう。丁寧に削る人はきれいに美しく仕上げようとしているんです。器用な人って、私はそういうふうに丁寧にできる人のことだと思いますよ。
汚い現場は、大工が平気で土足で上がる、切ったものをそのままにしておく、そのへんにほっぽっといた曲がった釘をそのまま使って打ったりもする。職人としての基本がなってないんですね。それが現場には全部表れるんです。
ところで、たまに施主が現場を見に来ると、中を掃いて掃除する人がいるんですけど、あれ、じつは迷惑なんです。施主がわざわざ綺麗にしてくれちゃったら、そこに削りかすを落とせないからノコとかそこでは使いづらくなるんです。多いんですよ、そういう人。現場監督でそういうことをするやつもいるんです。
それはもう、大工の邪魔をしてるんですよ。切り屑が出るのは当然なんだから、作業が終わったら大工は掃除するんです。だから、現場ではなるべく余計なことをしないで作業を見守ってほしいですね。
現場が綺麗であれば、作業中の事故はまず起きないですから。

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安村さんは一見コワモテの風貌だ。しかし、話しはじめるととても穏やかな口調で、時おり柔和な笑顔を見せてくれる。建築について語り出すと、次第に言葉に熱が籠もる。木造建築の建築士として半世紀を現場で生きてきた大ベテランに、家づくりと設計について話をうかがった。

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