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建築の3D空間に、2Dのアートやデザインを加えた際に生じる「効果」を検証するコンテンツです。

3D+2D

第2回

アートをDIYする。

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日本のアート市場が欧米のように開かれていないのは、いくつかの理由がある。おそらく一番大きい理由は、日本のように歴史が古く文化が成熟した社会のなかでは、文化や創作物が限りなく無償で手に入ることだ。二つ目は、単にアートにまつわる税制の問題があり、アートを購入しても節税効果がないばかりでなく、投機対象として機能しないことにある。三つ目はシンプルな理由だ。欧米に比べて日本の家屋が狭小なために、アートを配置する余裕がないことにある。最後の理由は、アーティストの属性の問題である。わかりやすく言うと、作家の人間性に問題があったり嫌いな人からはアート作品を入手したくないという、感情論的な問題である。作品以上に作り手の「負の運気」「心の絢(あや)」「ネガティブな感情」が作品を通して伝わってきては困るわけで、慎重に作家の人間性を選べば良いはずではあるものの、選定自体が煩わしいために作品購入が億劫になってしまうという、人間同士の関係性からくる根源的な問題である。

今回は、最後の四つ目の理由「アーティストの属性の問題」を意識的に無視することで、アートを抵抗なく室内に設置できることを検証してみたい。アートをDIYする、つまり日曜大工のようにアートを自作して飾るのであれば作家の属性を気にすることもないし、設置したときの達成感も得られるうえに住まう人のセンスが嫌味なく空間に現れやすい。では、さっそくオーソドックスで簡単な自作方法は、

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[用意するもの]
1.不要となったハンカチなどのリネン(0円)
2.木枠(洋裁店・画材店で入手可能/300円程度)
3.両面テープ(文具店で入手可能/200円程度)
4.両面テープフック(文具店で入手可能/300円程度)
作り方はとても簡単で、両面テープで木枠にハンカチを貼り付けて固定してしまえば完成する。作り方のポイントは、裏側までしっかりハンカチを巻きつけておくと壁面を損傷させずに済むことである。

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ここで前振りに戻ってみたい。ハンカチは、原則としてアーティストの属性情報のない工業製品だということである。工業製品であれば、いつでも好きな時に貼り替えて作品を更新していくこともできる。もしこれが手間を掛けた人間の意匠であれば、捨てることも押入れに収納して保管するのも、抵抗があるはずだ。とくに日本人のメンタリティでは、御守や神具と同程度に扱い辛いモノとしてアートを捉えているような現状があるからだ。

現在、このようなアートを脱臼させる試みが、インテリアショップやAmazonなどのネット通販で行われるようになってきており、実際に一部の市場で奏功している。家具のような工業製品としての量産型インテリア・アートとして、思い切ってアーティストの属性を排除することで、アート市場が今後も順調に拡大していくように思われる。

「アーティストの属性」の問題は、今後は非常に複雑な推移を辿ることになると思われる。その鍵を握るのが人工知能だ。あらゆる局面で人工知能が活用されている現在において、「アーティスト属性のない」演算された作品が、住み手の嗜好性と建築空間の特性の複雑な帰結シミュレーションを、一瞬で成し遂げてしまう。住み手にとっては、とても有益な選択肢が開いているということでもある。「アーティスト属性の特異な作品」と「アーティスト属性のない作品」を、ケースバイケースで使い分けることができる。市場もおそらく極端に2極化していくように思われる。その2極化の市場の隙間に美術系ワークショップの市場は堅実に残っていく。今のうちにアートをDIYする経験を積んでおくことで、新しい時代のアートと建築の嗜み方や連動性だけでなく、新しい時代の建築の在り方までもが見えてくるかも知れない。

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文・写真:竹中隆雄

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