家づくり救急隊

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シックハウス症候群

快適暖房術と湿度管理。


(1)冬の暖房を快適にする

  住まいの快適さの要因は4つあります。

物理的要因①外部環境要因 温度(放射温、輻射温)、湿度、気流(体表に当たる風)、空気の質(清浄、臭い)

物理的要因②着衣要件   着衣の断熱性や透湿性(人体表面の熱収支、熱の移動量と関係)

生理的要因        代謝量と血流、発汗量(皮膚表面積制御や感覚器感度制御などと関係)、体調

心理的要因・その他要因  その時の気分、温冷感や快適感、開放感(広さ、天井高、窓の大きさ、窓外景観) 
住み心地など感覚的なこと、気流(風通し)、音(騒音)、光(太陽光、照明)、  
色彩(壁やカーテンの素材や色、模様)、振動(道路環境)、過去の体験など

 冬場の快適な温度については、人間の生理、省エネ、建築工学などの観点からいろいろな意見があります。それらを詳細に説明することは避けますが、寒過ぎるのも、反対に暖かくし過ぎるのも良くありません。快適な室内温度にする必要があります。寒すぎると、血圧の上昇や風邪、肺炎、脳梗塞などを引き起こす危険性が高まります。一方、暖かすぎると、自律神経のバランスが崩れ、色々な症状を引き起こす危険性が高まります。
 そうしたことから、以下のような快適温度が考えられています。

子ども・成人        18~20℃(女性は男性より1~2℃高め)

高齢者           20~23℃(体温調節機能が弱まっているため)

乳幼児(生後1カ月~6歳) 20~23℃(体温調節機能が働き始めているため)

新生児(生後~4週間)   25℃前後(体温調節機能が未熟なため)

※ペット、観葉植物にも個々に適温があります。それらのための快適な温度・湿度などについては、かかりつけの獣医師、ペットショップ、園芸ショップなどにお尋ねください。

 また、室内を快適な温度に保っているつもりでも、いくつか盲点があります。
盲点①
室内の上下の温度差
暖かい空気は軽く、冷たい空気は重いので、暖房している部屋の場合、天井と床では10数度も温度差があると言われます。暖房しているのに、足元が冷える、寒いと感じるのはこのため。「頭寒足熱」と言う健康極意とは反対ですから、身体に良くありません。
【解決策①】
扇風機などを使って、天井付近の暖かい空気と床付近の冷たい空気を循環させ、室内の温度を極力均一化する。微風で、直接身体に当たらないように風向きを考えて扇風機を回します。エアコンと扇風機を併用すると効率よく足元まで温まるでしょう。
【解決策②】
床暖房にする。 床面からの輻射や足への熱伝導を利用している床暖房は、室温がそれほど高 くなくても暖かく感じられます。その長所から、新築やリフォーム時に床暖房にされる方が多いですが、既存住宅でも後付けできる床暖房システム(東京ガスの「簡単後付床暖房・戸建住宅用」)があります。もちろんコタツや電気カーペットも、床暖房と同じ効果が得られます。その場合コタツの下敷きの下や電気カーペットの下に、キャンプや災害時用の断熱シートを敷いておくと、床下からの冷気をシャットアウトでき、省エネになります。  
  これらとエアコンを併用すると、エアコンの設定温度を1~2℃低めの16~18℃ にしても十分に快適と感じます。エアコンの設定温度を2度低くすると消費電力 (すなわち電気代)が10%程度節約でき、おすすめです。

盲点②
窓や壁際の冷たさ


室内の温度が快適でも、窓などの開口部や断熱性の低い壁の温度は外気の影響で低いままです。 「熱」は、温度の高いほうから低いほうへ伝わるため、窓や壁の近くでは体熱が壁に奪われてし    まい、寒く感じます。すき間風も熱を奪う元です。
【解決策】
カーテンや断熱シートで断熱効果を高める。リフォームなどで壁や窓の断熱性が高められれば一番です。 カーテンを工夫すると、断熱効果が高まります。窓には床までの長さの、厚手のカーテンや二重カーテンにします。 窓のガラス面には、DIYの店などで売られている断熱(結露防止)シートを貼るといいでしょう。さらに壁やサッシの隙間にスポンジテープを貼ると冷気が入りません。壁にお好きなアーティストの大判ポスターを貼ったりするのも断熱になります。こうすると、断熱性能が上がり、結露の抑制・省エネになります。

盲点③
他の部屋や廊下等との温差
居間や廊下、風呂場、トイレ…家の中のいろいろな場所の温度を計ってみてください。よく使う部屋、みんながいる部屋は暖かくても、トイレや風呂、廊下などは暖房がないことが多いでしょう。暖かい部屋から急に温度の場所に行けば、血圧が急激に上がります。冬場にトイレや風呂の脱衣場入浴中に倒れる、亡くなるといったことがあるのはこのためです。若い人でも、血圧が正常な人でも、寒暖差によるストレスは身体に良くありません。  
【解決策①】
部屋の戸などを少し開けておいて寒暖差を少なくする。廊下や隣接する他の部屋との温度差は3~4℃以下にしたいものです。 マンションのように高気密・高断熱の家では、暖房している部屋のドアを開けたままで扇風機と併用すると、廊下や他の部屋との温度差が小さくなります。暖かい部屋から寒い場所に出る際には、着衣に気をつけます。少なくとも靴下やスリッパは面倒でも履いてください。
【解決策②】
トイレや風呂場、脱衣場にも暖房機器を設置する。高血圧の方のいる家庭、高齢者のいる家庭では必需品と考えてください。
浴 室 前もって浴槽の蓋を開け、湯を床面いっぱいにまいて温める方法もありますが湯も冷めますし、たっぷりの湯量が必要で、省エネとは言いにくいのが難点です。 冬場や雨の日、梅雨時の洗濯物の乾燥に困っている家庭なら、浴室が衣類乾燥室になる「浴室・脱衣室暖房乾燥機」(東京ガス)など、浴室乾燥機を後付けする手があります。

トイレ すぐ暖かくなる電気ストーブや、暖房便座がおすすめです。



(2)就寝時の暖房

 冬、暖房(エアコン)を付けっぱなしにして寝ていないでしょうか。睡眠時、私たちは身体を動かしていませんから、若干体温を下げ、安静な状態を保とうとします。ですから、タイマーで、睡眠後30分程度で暖房を切り、起床時間くらい前に再び暖房が入るようにしておくと寝苦しくなく、安眠できます。睡眠時は、空気の流れがなく、音もしない床暖房が最適という人が少なくありません。
   ※自分の暖房をもう一度見直してみてください。


(3)湿度が左右する人と住まいの健康

 湿度は体感温度を左右します。 夏場、エアコンの除湿機能を使う(最新のエアコンは温度が変わりません)と、皮膚から熱が奪われるから汗っかき、暑がりの人は涼しく感じ、寒がりの人は、温度が下がっていませんから、 寒くなったりしません。一方、寒い時期、湿度が低いと、体感温度は下がります。たとえば摂氏26℃で湿度が40%だと   体感温度は22℃になります。ところが湿度を60%にすると、温度が22~23℃でも、体感温度は25~26℃になるとか。ですから、快適に感じるために湿度をコントロールしてみましょう。 ただ湿度は不足でも過度でも人の健康と住まいの健康に「不快」「弊害」をもたらしてくるから厄介です。お宅に温度計はありますか。きっと1つや2つはあるでしょう。では、湿度計は?  まず湿度計でも買ってきましょうか…。もっと湿度について関心を持ちましょう。
 快適に過ごすための湿度管理には、次の盲点と対策があります。

盲点①
乾燥
暖房機器を使うと、部屋の乾燥が進み、湿度が30~40%以下と過剰乾燥状態になることがあります。 低湿は喉などの粘膜を痛め、風邪など健康被害を起こしやすくなります。また火災の危険性も高まります。
【解決策】  
冬場、わたしたちが快適と感じる湿度は60%前後です。湿度を上げる簡単な方法は、加湿器を使うことです。 加湿器には次のような種類があり、それぞれ一長一短があります。

[加湿器の種類]


加熱式の加湿器 水を加熱した蒸気で加湿します。加熱処理をするため、雑菌が繁殖しにくいというメリットがあり ます。吹き出し口付近の蒸気は60~100℃に達するため、ヤケドしないよう注意が必要です。

気化式の加湿器 水を含んだフィルターに風を送り込み加湿します。加熱しないため、吹き出し口から出る水蒸気でヤケドするといった心配がありませんが、水道水に含まれる成分のため部屋全体が白っぽい粉に覆われるという短所があります。またタンク内の水が雑菌で汚染されていると、部屋中に雑菌をまき散らしてしまうという危険もあります。

加熱式&気化式の加湿器 加熱式と気化式の両方の良い面を併せ持った方式です。 ※これまでの加湿器は、タンク内の水が無くなるまで加湿して過加湿になりましたが、最新の加湿器  は湿度センサーが付いていて、設定湿度になると自動的に加湿をストップします。

盲点②
過加湿


暖房している時は、とにかく加湿したほうが良いと思いがちですが、部屋の中で石油やガスを燃焼させる暖房機器は、熱だけでなく水蒸気も拡散させています。また炊事や入浴などでも湿度は上がります。家屋の構造でも異なりますが、気密性・断熱度の高い部屋で、加湿器を使ったり、ストーブの上にやかんを載せて水蒸気を発生するなどして加湿すると、過加湿になってしまうことがあります。 そうなると、結露が発生し、窓や壁などの表面だけでなく、畳や壁の中にも水分が浸透し、部屋(家)がぼろぼろになってしまうことがあります。
【解決策】
まず結露の起きたところ、起きそうなところに湿度計を設置し、湿度チェックをしましょう。湿度が70%以上だと結露だけでなく、カビも発生しやすいので、重点的に除湿する必要があります。  扇風機を使って風通しを良くしたり、除湿器を使います。 家の健康(結露、カビ、腐れ等の抑制・防止)にとって快適な湿度は40~50%です。ただ、家の健康のために湿度を低くすると、体感温度が下がって寒く感じてしまいます。ですから湿度は高め  (50~65%)にしても、結露などが起こらないように、2カ所開けて風の通り道をつくったり、扇風機を使うなどして換気・風通しを良くします。特に押入の奥、タンスや本箱の裏などに注意しましょう。


(4)住まいの湿気対策〜家の腐り、カビ、ダニにとりつかれない為に

 湿度管理は、冬だけでなく梅雨と夏も大切です。

湿度と食中毒   温度・湿度が高くなると細菌の増殖が活発になります。食中毒の危険性が高くなるのは温度20℃以上、湿度60%以上とか。炊事作業で台所の温度・湿度はどんどん上がりますし、海外からの輸  入食材が増えていますから、厳寒の冬を含め、一年中、食中毒にならないよう注意が必要です。買ってきた食材は冷蔵庫で保管し、素早く調理し、出来上がった料理は早く食べ終えます。残ったら冷蔵庫あるいは冷凍庫で保管し、100℃以上で再加熱して食べるようにするのが、食中毒を予防する一番の方法です。

湿度とダニやカビ 温度・湿度が高く、エサ(食べこぼし・食べ滓、カビ、垢など)があればダニはどんどん繁殖します。カビも水分、垢や埃があればどんどん繁殖します。ですからダニ・カビとも、梅雨時から夏にもっとも繁殖します。ところが、現在では、エアコンを始め暖房機器が普及し、住宅の機密性・断熱性が高まり、冬でも室温が下がりません。しかも加湿することは考えても、その弊害に  注意しないと、年間を通じてカビ・ダニに悩まされることになります。冬、暖房する場合、加湿器を使って健康に良いとされる湿度(60%前後)にするのは賢明なことですが、先にも書いたように、
A.過剰に加湿しない  
B.換気・風通しを工夫して余分な湿気を残さない(扇風機や換気扇を活用したり、窓を開け、 換気をする)
この2つを心がけましょう。

ダニ対策     ダニの住処となる布団、座布団、カーペットなどにこまめに掃除機を掛け、布団乾燥機があればそれを活用します。ダニを完全に除去することは不可能です。繁殖させないことを目標とします。

カビ対策      カビが繁殖しやすいのは、台所、脱衣所と風呂場、押入などです。
脱衣所・風呂
排水溝
タイルのネジ
ドア周辺
湿気が他の部屋に回らないように注意します。入浴後は浴槽に蓋をし(湯を抜く場合は蓋をしな い)壁や床、バスタブなどに水滴が残っていたら、タオルや雑巾で拭き取って、ドアを閉めて換 気扇を1時間くらい回し、湿気を完全に追い出します。浴室乾燥機があっても使い方を間違えるとカビに悩まされることになります。入浴後だけでなく、 洗濯物を干した後など、湿気がなくなるまで1時間程度は乾燥あるいは換気をしましょう。

台所
排水溝、蛇口周辺
調理後や食器洗浄後は、台拭きや雑巾などで水分をふき取ります。

押入や家具の後ろ 扇風機を使って、押入の奥や家具の後ろ側にも風が回るようにし、湿気が残らないようにします。



(5)水蒸気の発生元を知り、湿気を解消する。

 生活をしている以上、湿気(水蒸気)の発生は避けられません。 たとえば、私たち自身の汗。睡眠時、成人で40~50グラム/時、子どもで15~20グラム/時程度の汗をかいています。炊事では800~1000グラム/時、沸騰しているヤカンからは20~30グラム分の水蒸気が発生します。  その他、図表1のようなことも湿度アップ(ジメジメ)の原因になります。湿気の発生源は、意外と家の中にあります。自分で湿気(水蒸気)の発生源をリストアップして、そのうち1つでも2つでもいいですから、無くすとか、水蒸気の発生を少なくするといった工夫をします。

家のなかの湿気の発生源
①室内に洗濯物を干している。
②昼間、家中を閉め切っている。滅多に窓を開けない。
③金魚や熱帯魚の水槽がある。
④観葉植物等の鉢物が置いてある。
⑤調理中に換気扇を回さない。
⑥入浴中や入浴後、換気扇を回さない。
⑦お風呂のお湯を残している。
⑧洋式トイレの蓋を開けている。
⑨窓やサッシなどに結露があっても拭き取らない。
⑩滅多に開けない収納庫、押入などがある。
⑪ストーブの上にヤカンを乗せている(水蒸気を出している)
⑫タンクの水が無くなるまで加湿器を使う(過加湿の危険性がある)。
⑬冬場、部屋の温度は高めにしている(結露が発生しやすくなる)。
⑭その他


(6)ジメジメ解消に役立つ家電製品・使い方

エアコン  除湿機能でジメジメを取りましょう。1台でも、各部屋のドアを開けたままにすれば(外部への開口部=窓や玄関は閉めておく)、家中の湿度を下げることができます。換気扇や扇風機を併用し、空気の流れを作ると、除湿効果がアップします。
扇風機   湿気や結露が溜まりそうなところに風が回るように、扇風機の風を送って湿気が滞るのを防ぎます。押入や下駄箱などは内側に向けて、タンスの裏側へは壁や窓に当てて風が回るように送風し湿気を追い出し、エアコンや除湿器などで除湿します。室内に洗濯物を干さざるを得ない時は、扇風機の風を洗濯物に当てると早く乾きます。その場合、エアコンの除湿機能や除湿機、台所やトイレなどの換気扇を併用、あるいは窓を開けて行います。
除湿機   押入や下駄箱など狭い場所を効率よく除湿・乾燥できるもの、濡れた靴や衣類の乾燥ができるも、のもあります。エアコンの除湿機能より強力ですから、ジメジメがひどい場合はこれがおすすめ。
浴室乾燥機 寒い時期にも震えず快適に入浴でき、カビの発生も抑えられ、風呂掃除も楽になります。また、衣類乾燥もできるので、梅雨時や雨降りの日の洗濯物干しに困らなくなります。既存のお風呂にも後付けできるので、おすすめの機器です。
布団乾燥機 アトピーやダニに困っている家庭では必須。布団は午後1時から3時くらいの天日干しが最適ですが、共働きなど天日干しが難しい家庭でも。 朝起きたら、すぐ布団乾燥機を使い、睡眠中に出た汗による湿気を取ります。
衣類乾燥機 浴室乾燥機でも代用できますが…。梅雨時や雨の日に欲しくなります。




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