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不動産価格や土地の評価など知っておいていただきたいのが、
「不動産鑑定」です。


(1)不動産価格は収益性で評価

  バブル経済の崩壊以降続く不況で、経済はデフレーションに陥っていると言われます。最近、都心回帰の傾向が強まってい るため地価が下落から反転している地域もありますが、ほとんどの地域では地価の下落は続くかも知れません。その地価はどのように決まっているのでしょうか。今回は不動産鑑定についてお教えします。
 土地の評価には、専門知識や技能が必要なので、的確な評価を得る場合は、不動産鑑定士(補)の資格を有する人に依頼しなければなりません。不動産鑑定士に依頼する場合、鑑定の結果を書面にしてもらうと、正規の料金となり、ある程度費用がかかりますが、口頭で簡単に答えてもらうぐらいなら1万円程度でやってもらえます。また、不動産鑑定協会などが開催する無料相談会などを利用してもいいでしょう。



土地の「評価額」地価に関する公的な評価額(地価)には次の4つがあります~

種類 目的/利用方法 発表主体 発表時期 閲覧場所等
①公示価格 土地取引の指標
適正な地価の形成
土地鑑定委員会 毎年3月20日頃発表
(1月1日時点の価格)
不動産鑑定士事務所
図書館、書店
市町村担当窓口 等
②基準値価格 公示価格を補完
国土利用計画法の審査基準
都道府県 毎年9月頃発表
(7月1日時点の価格)
不動産鑑定士事務所
都道府県市町村担当窓口
③相続税評価額
(公示価格の約8割)
地価税、相続税、
贈与税の基準
国税庁 毎年8月頃に発表
(1月1日時点の価格)
税務署、図書館、税理士協会、
不動産鑑定協会 等
④定資産税評価額
(公示価格の約7割)
固定資産税、都市計画税、
不動産取得税を 課税する基準
市町村 3年毎の閲覧期間 に発表
(毎年1月1日時点の価格)
市町村担当窓口

 ところが、同じ不動産を対象にしながら、評価額が異なります。評価する目的と、算定に使う基準が異なるために起きる誤差です。  基礎になるのは「公示価格」です。毎年、不動産鑑定士が、土地鑑定委員会が決めた約3万の地点について、1月1日現在の価格を鑑定しています。  地価税や相続税の課税標準になる路線価は、公示価格の約8割、固定資産税の課税標準は、公示価格の約7割を目安に算出されています。  ただ、実際に取引される価格と、上記の4つの地価は、まったくまるきっり違います。


(2)取り引きされる場合の「地価」の計算方法

 不動産鑑定士は、以下の2つの方法を用い、その2つの価格を比較し、さらに公示地価なども考慮して、正常な㎡あたりの単価を、さらに土地の面積を掛けて地価を導き出しますが、最近は、短期間で変化しやすい「比準価格」より、長期間で考える「収益価格」を重視する傾向が強まっています。  なお「原価法」という鑑定法もあります。これは、その不動産取得にかかった費用、あるいは価値を高めるために山を切り開いて造成する、埋め立てるといった費用など、コスト面から見た手法です。完成したばかりの埋め立て地とか宅地造成地では一定の根拠を持ちますが、他の場合ではあまり意味を成しません。ですから、ここでは割愛します。

 ①取引事例比較法     市場性の見地から不動産へアプローチする鑑定手法で、その土地の周辺で売買取引のあった複数の事例を集め比べて「比準価格」を出す方法です。
 持ち家のように、収益を目的としない不動産の鑑定には、後で述べる収益還元法は適していませんから、今後も取引事例比較法が基準となります。
 取り上げる取引事例は、取引時点が新しく、その土地と地域的に同じような場所にあること、そして特別の事情が少ないといった、平均的・中庸なものが理想です。取引事例が多いほど、より適切な比準価格を導けます。
 ただ問題があります。一般の人には、取引事例とその際の取引価格がつかめないからです。
 その代用策が、広告等にある「売価」。多く集めてみます。建物部分の評価額は原価法である程度適正に導けますから、戸建・マンションの広告も参考になります。そうするだけで一般の人でも、土地の売価がある程度わかってきます。なお実際の取引価格は売価よりは下になるのがふつうです。

◆建物の評価
 ①現在時点でその建物を建築するとしたら建築費は幾らかを算出する
  (現時点での標準建築費は、㎡当たり10万円~15万円程度)。
 ②品等格差率(建築の程度、高級・中級・普通・超高級など)を掛ける。
 ③経過年数による原価率を掛ける。
 ③規模による市場流通性を考慮する。
  一般の人も、売買事例・売出し中の物件等と比較し土地の状況、
  ※建物の経過年数による原価率などを参考にすればだいたい計算できます。
  ※実際の売買では、一定の年数を経た建物は価値を評価されません(評価額ゼロ)。


 これをもとに、対象の土地の向き(方位)・道路状況・地形・面積(大きすぎても小さ過ぎても減点)・土地の傾斜・有効面積・環境などを勘案すると、ある程度の地価相場が導き出せます。  なお、取引事例比較法では、土地が更地(未利用の土地)である場合に最も高く評価されます。建物が建っていたり、入居者がいると、借地権・借家権によって、土地所有者の権利がそれだけ制限されるからです。一方、収益還元法では、更地(未利用の土地)の評価は低くなります。未利用だと収益を生まないし、収益を生ませるためにかかるコストを考慮するからです。  また、対象の不動産が、「駅前にある」、「繁華街に近い」、「人気の沿線にある」といったことは、取引事例法では高く評価される要因ですが、収益還元法では、一等地とか繁華街に近いといったことそのものでは評価されません。一等地にある、繁華街に近いことが収益性に寄与すると認められて初めて評価されます。

環境条件 住宅地や商・工業地との混在など土地の利用度、上下水道・ガスの普及度など

街路条件 道路の幅、街路や街区の状況など

交通接近条件 最寄り駅や学校、公園、商店街への距離など

行政的条件 用途地域など土地に関する公法上の規制など

その他の条件 地域の熟成度や将来性(都市計画や交通・道路網の整備計画など)など

 ②収益還元法     収益性の見地から見た鑑定法です。
 バブル経済の崩壊後、地価の下落、不動産取引の減少と、取引事例比較法の適用が困難となっており、特に商業地の不動産評価では収益還元法を用いるのが当たり前の状況です。
 対象不動産が、将来にわたって生み出すであろう「純収益」(収益から費用を差し引いた額)を一定の利回り(還元利回り=キャップレート)で割って、対象不動産(土地・建物)の価格を求める手法です。
 つまり、年間幾らの収益が上がる(投下資本の利回り)のか、何年で元が取れるのか、といったことから逆算します。
 還元利回りは、経済状況、金利水準、金融動向、不動産市場動向、法律改正(不動産・建築関係に限らない)、その物件が持つ投資上のリスクなどを考慮して設定します。経済状況、法改正、金融市場の動向などを将来にわたって予測するのは簡単ではありませんが、土地神話が無くなった今、見通しを甘くするより厳しくするのがふつうです。
 そのため、還元利回りはさじ加減次第で、その評価額は透明性に欠けるという声もあります。しかし、この鑑定評価法が広まれば、不透明さは無くなるでしょう。
 収益還元法には、いくつか方法があります。

A.直接法と間接法
直接法:純収益を対象不動産そのものの収益活動から求めます。
間接法:同種の収益物件(他の事例)から間接的に純収益を求めます。
 築年数や空室率などの要因を無視して、最も単純に計算すると次のようになります。
 賃料収入が年間1,000万円のオフィスビルで、諸経費が年間500万円だと、年間の純利益は500万円です。こ れを利回りで割ります。利回りを5%とすると、
5,000,000(円)÷0.05=100,000,000
ですから、そのビルの価格は1億円ということになります。

B.永久還元法と有期還元法
 永久還元法:純収益を永久に還元する。
 有期還元法:有期に還元し収益期間終了時の価格を加算する。
 
C.DCF法
 収益をキャッシュフローの観点から考えます。不動産証券化の流れから、有力に提唱されている方法です。
 適正な地価を計算するには、あらゆる要因を考慮する必要があるので、この程度の説明にとどめますが、いずれにしても、 今後は、収益還元法を主としたほうがいいでしょう。
 実は国もそうした行動に出ています。
 国土交通省では、不動産鑑定士が土地・建物の価格を算定する際の基準を見直します。見込みですが、2002年度から、商業用不動産の鑑定では収益還元法が実施されてれています。
 オフィスビルや商業施設など収益を生み出す不動産を、金融資産同様に投資の対象とする場合、利回りが判断の基準となります。ですから、収益還元法による土地価格が重要と判断し、基準の変更を決めたようです。
 これまでの鑑定基準は、土地と建物を切り離し、土地を重視したもので、取引事例比較法に基づいています。新しい基準では、オフィスビルなどを、土地と建物が一体の「複合不動産」と見なし、収益還元法で鑑定します。
 今後、金融機関や企業が、保有不動産を証券化して売却する動きが活発化します。個人向けの不動産投資信託(日本版REIT)も登場します。そうしたことを踏まえ、収益還元法について理解を深めておいてください。


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