家づくり救急隊

家は誰に頼む? 建築家に依頼しよう 工法と構造 家づくりの盲点 家づくりの相場表

 家・住宅づくりの重要なポイントの1つが構造です。木造・木質系の他、鉄骨や石積みなどがあり、敷地条件や施主の好み・ライフスタイルで向き不向きがあります。ですから、それぞれ特徴や長所・短所を知っておくことをおすすめします。




[1−1. 木造系]木造軸組住宅(在来工法)〜スタンダードな手づくり住宅

 伝統的な木造住宅の建築方法で、「在来工法」とも呼びます。日本の気候風土を、十分に認識した工法として知られます。基本的には大工さんや職人さんによる手作り住宅です。木造軸組の工法は、まず基礎の上に土台を置き、その上に柱を垂直に立て、柱に梁や桁などの横に架ける部材で骨組みを作り、筋かいなどで補強します。骨組みができたら、角材や板を縦横に組み合わせて家を作っていきます。

 構造上の特徴と問題点     ●窓や出入り口など大きな開口部を設けられる。
●筋交いの量と配置のバランス、接合部の金具補強などが耐震上の決め手。

 施工上の特徴と問題点     ●構造・施工指針があいまいなため、完成度が工務店や職人の熟練度に左右される。
● 結合部の施工が悪いと、将来、きしみ・傾きなどの欠陥が表面化してくる。
※そのため、利害関係のない専門家による施工管理が重要となる。

 レイアウト上の特徴と問題点  ●専門的に構造解析すれば、長大空間も可能。
●レイアウトの自由度が高い。
●築後の間取り変更や増築も容易。

 外観(外壁・屋根等)     ●外壁の材料は何でも可能。
●屋根の形状はどのようなものでも可能


[1−2. 木造系]木造軸組+パネル工法〜住宅の気密性アップ

 柱や梁などの軸材を組んで骨組みを構成する軸組工法に、耐力壁としてのパネル(面)を組み合わせてつくる建て方です。軸組工法の良さの1つである高い設計の自由度を生かしながら、パネルによる壁式工法の長所でもある高い気密性の住まいも実現します。この工法に使われるパネルも高性能化・多機能化が進んできており、それが住まい全体の性能アップへとつながっています。

 構造上の特徴と問題点     ●軸材と軸材の間に耐力壁の役割を果たすパネルを張り付けるため、強度が高く、
 地震や台風など外からの力、揺れに強い。
●気密性の高い住宅が可能。

 施工上の特徴と問題点     ●結合部の施工が悪いと、将来、きしみ・傾きなどの欠陥が表面化してくる。
●釘の長さ・打つピッチまで規定があるが、職人に長い習熟期間がいらない。
●工期は比較的短い。

 レイアウト上の特徴と問題点  ●構造指針により、多少の制約がある。
●築後の間取り変更は難しい。

 外観(外壁・屋根等)     外壁材料は何でも可能。
●屋根は自由にできる。
※ハウスメーカーの場合、一般に、仕様の中から選ぶことになる。


[1−3. 木造系]2×4(ツーバイフォー)住宅(枠組壁工法)〜面で家を支える

 アメリカやカナダなど北米で生まれ、発達・普及した工法です。断面寸法が2インチ×4インチの基本材(角材)で枠組をつくり、それに構造用合板を張ってパネル化し、このパネルを耐力壁として用いることから枠組壁工法とも言います。木造軸組構造が軸で重さを支えるのに対し、2×4は、床や壁・天井の6つの「面」で形・重さを支えます。なお、断面寸法が 2インチ× 6インチの枠材を使う「ツーバイシックス工法」、2×4工法でユニット化し現場で組み立てるプレハブ方式の「ツーバイフォーユニット工法」もありますが、説明は割愛します。

 構造上の特徴と問題点     ●6つの面で住まいを構成されており、地震や台風(風)など外部からかかる力は、
 6つの面に分散されるので、揺れ等に強い。
●耐震上、有効となる壁(外壁)の長さに制限がある。
●気密性の高い住宅が可能。

 施工上の特徴と問題点     ●釘の長さ・打つピッチまで規定があるが、職人に長い習熟期間がいらない。
●工期は比較的短い。

 レイアウト上の特徴と問題点  ●構造指針により、多少の制約がある。
●築後の間取り変更は難しい。

 外観(外壁・屋根等)     ●外壁材料は何でも可能。
●屋根は自由にできる。
※ハウスメーカーの場合、一般に、仕様の中から選ぶことになる。


[1−4. 木造系]木質系住宅(木質パネル工法)〜短工期の強い家

  基本的にはツーバイフォーと同じ工法ですが、ツーバイフォー工法が2×4インチの枠材と耐力壁での構成に対して、この工法は、複層・強化された木質パネルそのものが耐力壁を構成します。 この工法の最大の魅力は、より短い工期で家を建てられることです。

 構造上の特徴と問題点     ●工場生産された木質パネルで構成される6つの面で住まいを構成。
 地震や台風(風)など外部からの力は、6つの面に分散されるので、揺れ等に強い。
●気密性の高い住宅が可能。

 施工上の特徴と問題点     ●釘の長さ・打つピッチまで規定があるが、職人に長い習熟期間がいらない。
●工期は比較的短い。

 レイアウト上の特徴と問題点  ●構造指針により、多少の制約がある。
●築後の間取り変更は難しい。

 外観(外壁・屋根等)     ●外壁材料は何でも可能。
●屋根は自由にできる。
※ハウスメーカーの場合、一般に、仕様の中から選ぶことになる。


[2−1. 鉄骨系]重量鉄骨系住宅(ラーメン構造)〜狭い敷地でも自由設計可能

  「ラーメン」は「枠」を意味するドイツ語(Rahmen。英語だとフレーム=Frame)。木材を用いる木造軸組工法に対し、骨組に重量鉄骨(厚さ6ミリ以上)を用いる工法(鉄骨軸組工法)で、柱と梁の接合部を溶接で固めて、強度と耐風性を高めます。重量鉄骨とは、熱した鉄を「型」に入れて押し出して作られたもので、型の種類によって、H型鋼、I型鋼などがあります。スパン(長さ)も、木材等、他の材料に比べれば遙かに大きくとれ、加工もしやすいです。筋かいがないため広い空間を作ることができます。
 オフィスビルやマンション・アパート等の集合住宅、工場といった大きな建築物だけでなく、土地が狭い・変形敷地でも自由設計でき、しかも、耐震性・耐久性が高いので、3階建て以上の建築物では、この工法が適しています。建設費の低減傾向から、重量鉄骨構造でも、建設費は他の構造・工法と比べて大差がありません。都市近郊で多い3階建て以上の建物は重量鉄骨を利用する場合が多いのは、上記の理由からと言えます。なお、最近はH型鋼を組み合わせて造るより、柱を「コラム」といわれる角形鋼管とし、梁をH型鋼とする形式が主流となっているようです。

 構造上の特徴と問題点     ●鉄骨の柱・梁と、コンクリートスラブで構成され、耐久性等に優れる。

 施工上の特徴と問題点     ●構造部分は工場生産であるため、精度・品質的なバラツキがない。
●基礎と鉄骨の精度、鉄骨の錆止めが重要で、施工業者によりバラツキが出やすい。
●大部分が現場での施工の鉄筋コンクリートと比べ、工期が短い。

 レイアウト上の特徴と問題点  ●構造上の柱が少なくなるため、間取りはもっとも融通がきく。

 外観(外壁・屋根等)     ●鉄骨自体が揺れを前提とした建物のため、サイディング・ALC等が、
 揺れに追従する外壁材に限定される。


[2−2. 鉄骨系]軽量鉄骨系住宅(軸組工法・ブレース構造)〜優れた耐震性

  厚さ6ミリ以上の鋼材を使う重量鉄骨構造に対して、6ミリ以下の鉄骨を使う工法が「軽量鉄骨構造」です。 木造の筋かいのような斜め材のブレースを用います。柱と梁の接合部は多少動くようにして、斜め材のブレースで強度を高め、横からの力に耐えます。ラーメン構造よりも少し柱などの材を小さくできる、施工が比較的楽といった特徴があります。木造の筋かいの役割を軽量鉄骨構造では、斜めに渡した鉄筋が担当します。耐震性も木造建築によく似ています。

 構造上の特徴と問題点     ●耐震性に優れている。
●割れの可能性や錆や腐食に弱い。

 施工上の特徴と問題点     ●構造部分は工場生産であるため、精度・品質的なバラツキがない。
●施工は比較的楽だが、接合等の精度、鉄骨の錆止めが重要で、
 施工業者によりバラツキが出やすい。
 ※施工に問題があると、鉄骨が薄いだけに、構造そのものに影響する。
●大部分が現場での施工の鉄筋コンクリートと比べ、工期が短い。
●広い工事スペースを必要としない。

 レイアウト上の特徴と問題点  ●筋かいのある面を一定間隔で配置しなければならず、レイアウトに制約がある。

 外観(外壁・屋根等)     ●比較的自由。


[2−3. 鉄骨系]軽量鉄骨ユニット工法〜短工期施工

 部屋またはスペースの一部を工場で、ユニット(箱)単位で生産し、これを現場で組み立てる工法です。軽量鉄骨と組み合わせるパネルに、不燃パネルを使ったタイプと、ALC系パネルを使ったタイプとがあります。

 構造上の特徴と問題点     ●鉄骨のユニット化した部材は工場生産で精度は高い。
●高気密化住宅が可能。

 施工上の特徴と問題点     ●工場で組み込んだユニットを現場に運んで据え付けるので、工期が極めて短い。

 レイアウト上の特徴と問題点  ●間取りはメーカー仕様の組み合わせになる。

 外観(外壁・屋根等)     ●外壁材料は何でも可能。
●屋根は自由にできる。
※ハウスメーカーの場合、一般に、仕様の中から選ぶことになる。


[3−1. RC系]鉄筋コンクリート住宅(ラーメン構造)

  「ラーメン構造」は、柱と梁で建物を支える構造です。柱や梁が大きいので、それらが室内に飛び出しますが、住宅として考えた場合には、最も自由な平面計画が可能です。完成後の間仕切変更および改修工事等は、比較的容易です。また、遮音性、断熱性は他の材質による工法、構造と比較しても非常に優れています。

 構造上の特徴と問題点     ●コンクリートの柱・梁とコンクリートスラブで構成され、
 耐久性・耐震性・耐火性などに優れている。

 施工上の特徴と問題点     ●鉄筋を現場で組み、型枠にコンクリートを流し込んで作るので、
 現場精度で建物の良し悪しが決まる。
●施工業者の能力・熟練度等で精度にバラツキが出る。
●コンクリートは化学変化によって強度を増し、鉄筋を錆から守るので、
 コンクリートの質・養生の期間を守ることが重要。よって工期は長くなりがち。

 レイアウト上の特徴と問題点  ●柱や梁の位置を考慮する必要がある。

 外観(外壁・屋根等)     ●複雑な屋根形状、木材や石、タイル等の外壁は、コスト高になり、
 施工レベルも高いものが要求される。


[3−2. RC系]鉄筋コンクリート(壁式工法)・コンクリート一体壁式工法

  厚さが15センチ以上の鉄筋コンクリートの壁を柱の代わりに使って、壁全体で建物の強度を確保する壁式工法です。構造体を構成するところに鉄筋を配し、そのまわりに合板で型枠をつくり、その中にコンクリートを流し込んで一体化します。現場でコンクリート打ちをすることから「コンクリート現場打ち工法」とも言われます。

 構造上の特徴と問題点     ●2×4(ツーバイフォー)と同じようにコンクリート壁とスラブで構成される。
● 断熱性・遮音性に優れ、防火性も高い。

 施工上の特徴と問題点     ●鉄筋を現場で組み、型枠にコンクリートを流し込んで作るので、
 現場精度で建物の良し悪しが決まる。
●施工業者の能力・熟練度等で精度にバラツキが出る。
●コンクリートは化学変化によって強度を増し、鉄筋を錆から守るので、
 コンクリートの質・養生の期間を守ることが重要。よって工期は長くなりがち。

 レイアウト上の特徴と問題点  ● 構造体として適度な配置で壁が必要なので、平面(間取り)に制約がある。
●鉄筋コンクリート・ラーメン構造ではどうしても避けられなかった
 柱の居室への張り出しがないので、実質的に部屋を広く使える。
●将来、内部のRC間仕切壁を取り除くことは不可。

 外観(外壁・屋根等)     ●複雑な屋根形状、木材や石、タイル等の外壁は、コスト高になり、
 施工レベルも高いものが要求される。


[4−1. その他]混構造

 木造3階建で1階にガレージなど大きな開口部や空間をとりたい時に使われる構造で、1階は鉄骨造又は鉄筋コンクリート造、2・3階には木造がよく使われます。 各構造のメリットを取り入れた構造ですが、鉄骨造・鉄筋コンクリート造と木造部分の接合部がしっかり施工されていないと耐震性能の悪い建物になります。


[4−2. その他]煉瓦造り・コンクリート系住宅・RCコンクリート住宅

  レンガや石、工場でつくられたコンクリートブロックとかコンクリートパネルなどを積んでいく工法で、壁式構造です。日本の伝統的な工法ではありませんが、コンクリート系プレハブ住宅で採用されています。プレキャスト(PC)コンクリートのパネルを接合してつくられるコンクリート系住宅は、極めて頑丈です。

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