シックハウスの家に住むと、以下のような症状を引き起こすことがあります。 |
(1)家が引き起こす不快な症状-恐怖のシックハウス症候群
・目が痛くなる、目やにが出る、目がチカチカする ・鼻がむずむずする、鼻水が出る、くしゃみが出る、 鼻の奥がヒリヒリする ・喉がイガイガする,痛い、乾く、口内炎ができやすい ・頭重、頭痛 ・集中力が低下する、物忘れがひどい ・脱力感、身体がだるい、倦怠感 ・気分が悪い、吐き気、めまい |
・発疹、皮膚炎、かゆみ、アトピー性皮膚炎・喘息のような発作、痰がからむ ・食欲不振,腹痛,下痢,便秘 ・肩こり ・手足の冷え ・発汗異常 ・不眠、不安 ・心悸亢進(急にドキドキする) 等 |
(2)原因は建材・接着剤・塗装などの化学物質
最近の住宅は、主として省エネのために高気密性・高断熱性が重視されています。一方で、家づくりに使われる材料(建材や接着剤等)は、安さ・取り扱いの容易さ・見栄えの良さ等から、伝統的なもの・自然のものが敬遠され、多くは合板や化学塗料、新建材等が使われています。その結果、それらに含まれる有機化合物、すなわちホルマリンやトルエン、キシレンなどが揮発し、室内に放散されます。
たとえ揮発し、室内に放散されたとしても、その量が少なく、また、換気が良くて、すぐ戸外に放出され、化学物質が室内に滞留しなければ、そう問題にはなりません。
ところが…。高気密性があり、また省エネのために室内の空気を入れ替えたりしない時、高密度の化学物質が室内に滞留したままだったら、大変なことになることがあります。化学物質に長期間曝されている(鼻や口による呼吸、皮膚呼吸等)うちに、ある時、突然、極めて微量な化学物質に接触しただけで、頭痛や全身の倦怠感、集中力の低下など不定愁訴のような症状が出現するのです。
これがシックハウス症候群の正体の1つ、「化学物質過敏症」です。
※なお、現在、化学物質に依るもの以外に、
・ハウスダスト(粉塵やホコリ) ・ダニ(死骸も含む) ・花粉(スギ、ヒノキ、セイタカアワダチソウ、ヨモギなど)
・カビ(胞子も含む) ・細菌 ・換気不十分や空調の不調等による二酸化炭素や一酸化炭素 ・窒素酸化物(NOx)(車の排気ガス) 等
化学物質過敏症ですから、新築や増改築でなく、古い家であっても、新たに購入した家具や絨毯から化学物質が揮発して起こることもあるので注意が必要です。
もしあなたが、新築や増改築、あるいは新しい家具を買った直後、室内で先に記したような症状が出るようになり、屋外やよそのお宅ではそんな症状が出ないといった場合、シックハウス症候群になっている可能性があります。至急、医療機関で相談してください。
(3)こんなにある、シックハウス症候群の主要な原因物質
ホルムアルデヒド(ホルマリン) | 合板や集成材、フローリング材、断熱材、カーペット、接着剤、防かび剤、消毒剤、脱臭剤等に使われている。それ以外に、壁紙やペンキ、洗剤、パーマネントプレス仕立てのシャツやシーツ、紙おむつ等にも使用されている。 |
芳香族炭化水素(トルエンやキシレンなど) | 油性塗料や塗料に混ぜる有機溶剤系接着剤に使われる。 |
殺虫剤(有機リン系・ピレスロイドなど) | シロアリ駆除剤、木材の防虫・防蟻剤に使われる。 |
防腐剤(クロム・銅・砒素系クレオソート系) |
木材の防腐剤として使われる。 |
可塑剤(DBP・DOPなど) | 断熱材・ビニールクロス・酢酸ビニール系接着剤、塩化ビニール等の合成樹脂に使われる。 |
(4)シックハウス症候群への対応策
許容量を超えた途端、非常にわずかな化学物質に曝されただけで症状が出るようになります。そうなると、原因となった化学物質だらけの家には住めなくなるでしょう。
現在の医療では化学物質過敏症の根本治療は難しいのです。ですから対策法としては次の2つぐらいしか考えられません。
1.化学物質を出すものを徹底的に排除する
→換気を良くする
→化学物質フリーの家に改造(化学物質を放散するものを排除する)
しかし、使われていた資材や工法によっては、すべて取り壊して、新たに建て直さなければならないこともあります。
2.化学物質フリーの家(主としては築年数の経っている家屋・アパート)に引っ越す
いずれにしてもお金も忍耐も必要になります。
ですから、そんなことにならないよう設計事務所、建設会社に十分に配慮してもらう必要があります。 気を付けないと、そんな家をあなたは建ててしまうかも知れません。 建設会社の無知から、そんな家になってしまうことだってあります。「健康仕様」を謳った住宅や建材・資材が最近増えてきました。ところが、驚くことに、化学物質を使っているものがあるのです。たとえば、健康に良い資材として話題になっている「珪藻土」。これは粉状ですから、つなぎが必要です。そのつなぎになぜか化学糊を使ったものがあるのです。正しい知識を持って、シックハウス症候群を入念に予防することが大切です。
(5)シックハウス症候群を予防する建材・資材選び
シックハウス症候群が問題にされるようになったここ数年、建材メーカーでもシックハウス症候群対策に 努めており、また国も、住宅生産者向けに「設計施工ガイド」、消費者向けに「ユーザーズマニュアル」を発刊(1998年4月)したり、品確法において合板などのホルムアルデヒド放散量の規格を表示したり、さらにはリスクのある物質を追加して室内濃度指針値を発表する(最終的には50種くらいになりそう)などいろいろ対応しています。 しかし、まだ不十分だと言わざるを得ません。いつまで待てば、消費者にとって真に安全な家づくりが可能になるのでしょうか。結局、現時点では、自分の身、家族の安全は自分が責任を持つという強い意識が必要です。 建築家(設計事務所)、ハウスメーカー、建設会社・工務店に、シックハウス症候群への対応策 とそのための資材および仕入れ先を尋ねましょう。明確に答えられないところは、シックハウス対策をしているのかどうか不安です。 シックハウス対策に詳しいところを選び、そのうえでよく話し合って、使う資材を決めましょう。
内 装 材 | 内装材に含まれる化学物質はできるだけゼロを目指します。 ①壁(布クロス、紙クロス、不燃布、その他) 可塑剤、防カビ剤、難燃剤を含まないもの。 ②左官材 合成化学物質を含まない、昔ながらの漆喰や土壁や珪藻土など。 丸京石灰工業所(http://www.marukyosekkai.com) 地球環境技術研究所(http://www.chikyu-kankyou.com) ③塗料 水系(エマルション)塗料か天然系塗料。溶剤に注意。 日本オスモ(http://www.osmo-edel.jp) 帝国器材(http://www.teikokukizai.co.jp) ④タイル(コルクタイルなど) 無塗装あるいは天然ワックス仕様。 東亜コルク(http://www.toa-cork.co.jp) LIXILのエコカラット(http://ecocarat.jp) ⑤畳 畳表、ワラ床、綿布による畳縁の伝統的な畳。 防虫処理などをしていないものを。 できればイ草や稲(ワラ)の栽培時に化学肥料を使っていないものを使いたいものです。 ⑥フローリング できればムク材。複合フローリングはおすすめしません。 ⑦ボード類 ホルムアルデヒド放散量の低いボード。ケナフを使ったボードなど。 |
内装下地材・断熱材 | 下地であってもホルムアルデヒド放散量の低い材料を選びたいものです。断熱材は天然素材系を。 |
床 下防腐・防 蟻 剤 | できれば床下の薬剤処理や散布を行わないようにします。そしてねこ土台などで風通しの良さを目指します。 |
建 具・家 具 |
1つ1つはたいしたことがなくてもトータルでは大量になることがあります。 |
構 造 材 ・ 外 装 材 | 構造材は内部にむき出しでなければあまり気にしなくてもいいでしょう。接着剤で密着されている集成材もありますが、ヒノキやスギのむく材を使うほうが良いと思います。いずれにしても化学物質の放散がゼロ、できれば低いものを使いたいものです。 |
接 着 剤 | せっかく安全な材料を使っても、施工の際に化学物質が発生することだってあります。接着剤などにも注意します。 帝国器材(http://www.teikokukizai.co.jp) 素材工房のでんぷん糊(http://sozaikoubou.com/goods/settyakuzai/harebare.html) |
そ の 他 | 化学物質がたとえ揮発して室内に放散されても、通気をよくしていれば防ぎやすくなります。そのために方位や風向き、それに合わせた間取り、開口部(ドア、窓、地窓、高窓など)の位置を工夫します。 |
(6)すでに建てている家の、シックハウスの予防法
①通気・換気 住宅の引き渡し後、極力、開口部を開けて通気をします。換気扇も重要です。湿気やカビ対策にもなります。
②室内清浄器 化学物質を除去できるものがあります。これを使うことで、室内の化学物質の濃度を下げることができます。
(7)すでに建ててしまった家の、シックハウスの改善法
①ベイクドアウト | ストーブなどを使って室温を35度以上にして、建材中にある化学物質を強制的に放散させる方法です。そのうえで扇風機などを使って換気をします。これを何度か繰り返すことで、建材からの放散量を少なくすることができます。 |
②吸着剤 | 化学物質を吸着してくれるもので、面状のものがおすすめです。 キッチンや押入、家具などに貼ります。できるだけ多量に使うことです。 |
③拡散した化学物質 | 壁紙やフローリング、そして接着剤などです。簡単なリフォームで済むようなら、これを行います。 |