家づくり救急隊

家は誰に頼む? 建築家に依頼しよう 構造と工法 家づくりの盲点 家づくりの相場表

(1)建築家を薦める理由


 設計事務所(建築家)に依頼した場合、設計料・監理料の分、出費が増えます。それでも設計事務所をオススメするのは、ハウスメーカー・工務店から示される設計・施工の見積りを鵜呑みにした場合と比較した時、使用する材料や設備、人員配置・工期等の見積書内容を適正かどうか査定して、合理的な建築費に抑えることができるからなのです。 また施工業者は、見積書の金額より安く施工すれば、その差額が利益になります。契約書や仕様書を勝手に変更して施工することは許されませんが、安く上げるために、現場で勝手に変えてしまうこともあります。これが手抜き工事やトラブルの原因です。専門知識のない施主がそのチェックをすることは困難です。いい家をつくるために、トラブルを防ぐためにも、施工業者と工事監理者とを分離させる必要があるわけです。この安心は何ものにも代えられません。


(2)建築事務所は高い?

 設計事務所に依頼すると、設計料がかかります。設計だけでなく工事監理も依頼すると、一般住宅の場合で工事費の5~10%程度、マンション・店舗では3~8%程度が必要です。それは高いでしょうか。 設計監理料が極端に安かったり、サービスするという業者もあります。しかし無料で設計できるはずがありません。工事費に上乗せしたり、経費などの項目に含むのです。 そのため、多くの場合、設計事務所へ設計料を支払っても、トータルでは高くなりません。


(3)監理も依頼する必要はありますか?

 建築士法に定められている建築士の役割とは……建主の意向に沿って専門家として設計し、見積りの当否を確かめ、注文通りに施工されているかを監理する。建設会社・ハウスメーカーに雇用されている建築士についても同じですが、雇用されている会社の利益や意向に反してまで建主のサイドに徹するのは難しいのが実状です。
  無用なトラブルや工事の不具合、手抜き工事等の防衛のためにも、設計と施工をはっきりと分離させるべきです。海外では、設計と施工請負ははっきりと分離しています。日本では、昔から大工の棟梁が設計も施工も一貫してやっていた伝統がありますが、それはすばらしい棟梁に出会った時に限るべきでしょう。


(4)建築家に依頼した場合の実務内容

 1.情報収集           知人の紹介や住宅雑誌、インターネット、電話帳などから、気になる建築家をリストアップ。
住宅現物を見て決定するのも一手。

 2.訪 問            基本的に設計契約前の打ち合わせは無料。都合のいい日時に、こちらから出向く。敷地や家族構成、ライフスタイル、設備・内装等のグレードや仕様、使いたい部材、建物の完成時期、大まかな予算等の話もする。決定の即答は避け、依頼しない場合は必ずその旨を伝えるのが礼儀。

 3.相 談            家族構成、ライフスタイルや好み、予算、自己資金、毎月の返済可能額、敷地状況等を伝える。

 4.ラフプランおよび概算見積   建築家のラフプラン制作実費を概ね5〜10万円。ラフプランまでは無料という建築家もいるが、事後のトラブルを避けるために、事前に確認しておく。打ち合わせは納得がいくまで行い、ラフプランの変更を求めて理想の家を具体化していく。

 5.正式契約           設計時期・期間、監理の内容・回数、設計料・監理料の額・支払い法・支払い回数と支払い期日、建築取りやめになった場合の処置など、後でトラブルにならないよう、きちんと契約を結ぶ。その場で依頼するかどうか即答せず、後で冷静になって判断する。契約書に工程表を添付するのが望ましく、施工段階の要所要所で、建築家自身が施工現場に出向いてチェックしてくれるような契約内容にする。工程に合わせて建築家が施工現場へ赴く時期と回数を確認し、設計料・監理料は建設省の告示によって細かい算定式があるが、打ち合わせから建物の完成・役所の竣工検査・入居までもろもろ含めて、総工事費の約10~15%程度が目安。 それを設計料と監理料に分けるとすると、 60%対40%程度が最適だと思う。 支払いは何度かに分ける。特に施工監理料は先払いしない。契約通りにきちんと監理されていることが確認できたら支払うという契約内容にする。

 6.基本設計・概算見積      内外装仕上げ材や照明、外構、家具配置等をサンプルや模型などを用いた提案がある。構造や外観、間取り、設備のグレード等が決まるので、納得のいくまでやりとりを。家相・風水を気にする場合、忘れずに伝えておく。

 7.実施設計           構造はもちろん細部に至るまで仕様や設備・部材、メーカー等を決定していく(施工に必要な全ての工事用図面・詳細図)。パースは最低10枚以上、図面は最低でも30枚程度、多いと100枚ぐらいを提案される。枚数の少ない建築家は要注意。

 8.確認申請等          実施設計と並行して、所管の役所に土地の使用や建物を建てるための確認を受ける申請がなされる。

 9.見積依頼・見積調整      複数の施工業者から見積してもらい、見積書や工事請負契約書などを建築家がチェックする。相場表をご参照ください。

 10.施工業者決定・工事請負契約 施主と施工業者との間の契約だが、建築家当然も立ち会う。

 11.近隣説明            施主も同行するのが望ましい。

 12.地鎮祭           工事の無事を祈って土地の神様を祀る儀式。行う行わないは施主次第。

 13.着工・監理         建築家は定期的に20~30回は現場を訪れ、設計通りに施工されているかをチェックしている。施主も期的に現場を訪れ、写真やビデオを撮ることも考える。変更指示や要望、不満などはすべて建築家を通じて現場に伝えればいい。

 14.上棟式(棟上げ式)     家の骨組みがほぼ出来上がったところで行う儀式。行う行わないは施主次第。都会では減っている。

 15.竣工・引き渡し       役所の竣工検査を受け、建築家の立会のもと、工務店から建て主へ建物・鍵が渡される。メンテナンス等も考えて、建築家とは引き続きつきあいを。


(5)設計事務所(建築家)もピンからキリまで

 残念ながら、すべての建築家(設計事務所)が良質とは言い難いのが現状です。学歴や事務所の規模、歴史ではその実力は計れません。必ずしも大きな事務所である必要はありません。設計は、結局、個人あるいは少数のグループで行うものだからです。過去の仕事・実績から判断したり、一般住宅なのかマンション(共同住宅)なのか、商業施設付き住宅、事務所ビル……何を依頼するのか、それに向いているのか等から判断しましょう。また実際に会ってみて、意欲があり、よくこちらの話を聞き、さらに向こうが積極的に要望や方向性を聞き出そうとしてくれるかどうかも重要な判断材料です。


(6)設計事務所(建築家)の選び方

 知り合いがいるというなら結構ですが、どうやって気に入った建築家を探すかということは一番の難問です。雑誌などで設計者をリストアップし、建物を見るだけでなく実際に会って相談して見るのが最も良い方法でしょう。会えばすぐに契約をというわけではありませんし、人には相性というのがありますから納得のいくまで時間をかけることが大切です。また、建築家を紹介する会社もありますから利用してみるのも手です。

1. 建築家の得意分野を
建築家なら誰でもいいわけではありません。構造設計が専門の人もいますし、意匠設計が専門の人もいます。一般住宅よりマンション、商業施設、オフィスなどに強い人もいます。これらを見極めなければなりません。デザインは良くても住みにくいのでは困りますし、会ってみて、相性が合わないこともあります。ですから、1~2回会ってから断っても良いのです。そして別の建築家に頼めばいいでしょう。あるいは、複数の建築家を対象にコンペをする方法もあります。その場合、コンペ費用としてそれぞれの建築家(契約をお断りする建築家)には、御礼として5万円程度を支払います。

2. 使用する材料に詳しくない人もいる
家のデザインや構造などには詳しくても、使用される材料にあまり詳しくない人もいます。デザイン性を重視するあまり、材料の善し悪しを軽んじたりする場合もあります。

3. 監理に弱い人もいる
設計は得意でも、施工監理が不得意な建築家もいます。その場合は、設計だけを依頼し、監理は他の信頼できる人(建築プロデューサー等)に委任するといいでしょう。

4. 建築家から紹介される施工業者で大丈夫?
こんな言い方をすると、建築家を信用していないようですが、そうではありません。建築家は、普通、それまでに使ったことがあり、安心して任せられる施工業者を選びがちです。それ以外の、信用できる業者からも見積を取れれば、それに越したことはありません。そういった意味で、幅広いネットワークを持ち、建て主の立場で、建築家・施工業者と交渉する、家づくりを総合してプロデュースする会社が求められているのです。

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